30年食べ続けるということ。

ホテル改装に伴い8月末でこの場所は閉めるそうです

好きな食べ物って、皆さんあるでしょう?

行きつけのお店って、皆さんあるでしょう?

自分にとってはここです。エキマエにあるスパゲティのお店「イタリア」。パスタじゃあないです。スパゲティです。ここ大事(笑)

初めて行ったのは確か高校2年生の頃です。土曜日だったかな、当時は 午前中で授業が終わることを “半ドン”って言ってたんですが、学校の帰りに友達とエキマエでお昼食べようってことで、友達に連れてきてもらったのがここでした。

カウンターだけの、全部で10人入ったら一杯になるような、そんなお店でした。 でもって、めっちゃメニューがあるんです。30種類くらいはあるのかな。でも、いつも同じメニュー「スチューデント」。それだけを食べてました。学生さん用にって、作られたものだと思います。トマトソースにウインナーとかハンバーグだったかな、とにかくお腹いっぱいにしてくれるそのメニューだけを食べていました。

このとき、一番驚いたというか、カルチャーショックだったのが、「スプーンとフォークで食べる」ということでした。我が家では家でスパゲティとか食べるときって、フォークだけだったんですよ。それをフォークとスプーンで一口分ずつまとめて食べるスタイル。最初は「おしゃれんてなー」って思いましたよ。それ以来、家でもスプーンとフォーク使って食べるようになりました。

それからも何度か通いました。なんたって、生まれた年とオープンした年が一緒なもんだから、親近感も沸いてましたし、何よりも自分の舌に合っていたというのもありました。当時はね、繊協ビル1階にあった「モスバーガー」かユアーズホテル地下の「イタリア」。もう自分にとって鉄板のランチスポットでした。

卒業して大学と県外を離れると、こういうのありません? 「帰省したら食べたいもの」って。ありましたよね。おかんの料理はもちろんですが、「鶴来」の餃子、「ヨーロッパ軒」のカツ丼、「8番ラーメン」、そして「イタリア」。いわゆる故郷の味の一つでした。

いろいろ寄り道して、福井に戻ってきたのは今から21年前。今の会社に入ってからもまあ行きました。取材も何度かお願いしました。何よりもこの味を知って欲しい思いと、足が離れた人に思い出して欲しい思いが強くあったからです。

そうすると名前も顔も覚えてくれるようになって。で、ちょっとお願いしてみたんです。「誕生日に特別なスパゲティを食べたいんです。特製ソースのスパゲティ作ってくれませんか?」って。特製ソースは元々あるんです。でもこのソース、あるメニューにのみ使われるもので、通常はスパゲティだけ、というのがないんです。まあ無茶振りです。でも快く作ってくれたんです。

これです。これは大盛バージョン。

いやー感動したんですよ、このソースに。口に入れたときに自分の中で沸き上がった思い出がありました。福井に帰る1年前、ワーキングホリデーでニュージーランドに1年間ほど住んでいたんです。そこではほぼ自炊生活で、いろんな食材とかを買ってはいろんなものを作っていました。食材も調味料も日本で買えるものとは違うわけですから、そのときの味は今も強烈に記憶していたのですが、それが故郷の味の一つにあったときの感動、もう奇跡のような出会いでした。

以来、自分の誕生日のときにだけこのメニューをお願いして出してもらっています。普通はサービスランチいただいてます。毎回なんて言いません。自分もこの味を一年に一度だけ味わう特別なものとして捉えています。お店の方も覚えてくださってて、毎回快く出してくれてます。

そういえば、自分はいつからこの味をお願いしているのだろうと思い出していたんですが、ニュージーランドのことを考えると多分10年じゃきかないような、15年くらい食べてるんじゃないか、って思います。

それくらい特別なものです。これは場所の思い出も含めてなんです。高校時代から始まって、今に続く話ですし。30年続く味の記憶の物語です。

が、その物語も終わりを迎えるときがきました。新幹線延伸でエキマエは大きくリニューアルを果たします。ホテルも大きく様変わりします。今ある「ユアーズホテル」も5月で終了します。となれば、この「イタリア」も終わりとなるんです(お店自体は8月までやってますよ)。

あぁ、「鶴来」に続いて味の物語はなくなってしまうのか、と思っていたら! なんと移転とな! それも新しく建ててスタートするとな!

何がビックリって、お店を切り盛りされている宮崎さんご夫婦、77歳と73歳。新しく始めるって、相当な勇気だと思うんです。でも、「これまで49年、辞めようなんて思ったことは一度もないよ。だってお客さんが楽しみに待ってくれているから」。

商売ってこの一言に尽きるんだと思います。いくら自分でいいものを作ったといっても、消費してくれる人たちがいなければ成り立ちません。ずっと同じ味を作り続けるということ、それはこれまでのお客さんを安心させることであって、これからもお客さんを満足させることでもあります。今回のコロナ下であっても、お店は極力開けていたそうです。遠くから楽しみに来られた方もいました。何キロも歩いて来られた方もいました。こんな状況下でも楽しみにしている人たちがいる、その人たちをがっかりさせない、美味しさを追及し続ける限り、お店を閉めるという選択肢はない、ということです。「夫婦のどちからかがそう思ったら続けられなかったかな」。夫婦のチカラというものを垣間見た気がしました。

この味の物語は第二章に続きます。でもやっぱり、変わらないまま、好きな味のスパゲティが食べられると思います。来年の誕生日には新しいお店で紹介することになるでしょう。

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