家島にて
今回はいろんな意味で濃い3日間を過ごしました。
ここ10年近くは家族で旅行する先として2ヶ所しか行っていないんです。いろんな街を見に行く、という旅もありなんですが、最近旅のありかたをいろいろ考えていくと、人のつながりを非常に高いシェアとして持っています。
その一つ、瀬戸内海に浮かぶ「家島」という島に、毎年お邪魔しています。この島、一言で言えば「日本のウォーターセブン」ってとこでしょうか。ウォーターセブンってなんやねん、って知らない人もいますよね。マンガ『ONE PIECE』に登場する造船の島です。今も造船業をされている方も多く、湾内にはたくさんの大きな船が係留されています。
この島を知るきっかけは、嫁と嫁の友人でした。「あなごのしゃぶしゃぶって食べたくない?」。この一言から始まりました。あなごとしゃぶしゃぶ、結び付かない言葉の並びにワクワクが止まりませんでした。それも島。さらにワクワクが止まりませんでした。
初めて訪れたのは2012年。フェリーを降りると迎えに来てくれた店主・高島一彰さん、通称かずさんは開口一番「おかえりなさい!」。破顔一笑その言葉にすぐにこの島の虜になりました。初めて会ったのにそう感じさせない雰囲気に、居心地の良さを感じさせてくれました。
港から宿まで2.4km。歩くには遠い、ってもんじゃなく、道が狭い! 送迎車のミニバン一台分の道幅しかない! さらにところどころに原付が停まってたり対向車もあったり。たった2.4kmのドライブが、ワクワクにドキドキを付け足してくれました。
宿の名前は『料理旅館 志みず』。平らな土地が少ないので、入るやまるで迷路のような建物に、ワクワクが止まりません。目の前には遠くに中国地方の山々と街並みを望む静かな瀬戸内の海。日本海しか知らないから、向こうに土地が見える海って新鮮でした。
そしてお目当ての夕食「あなごのしゃぶしゃぶ」。というか、そこにたどり着くまでどんだけ料理出るねん! ってくらい、地の魚がこれでもか!と。もうそれだけでも満足なのに、あなごが生で食べられる新鮮さ。福井の魚は旨いと思っていますが、福井にはない魚の料理に、やっぱりワクワクが止まりません。
で、食事が終わってかずさんと語り合うんですが、古事記や日本書紀など神々の話がふんだんにあるもんですから、楽しい楽しい。家島神社の由来も、そのとなりの島の巨大な岩も、ワクワクが止まりません。翌朝早朝から神社にお参りに行きました。
それに、毎年神社の祭りがあるんですが、その船のなんと豪華なこと。神事をしっかり受け継いで執り行なっている土地柄も、この島を好きになっている理由の一つです。
かずさんは「米米CLUB」が大好きで「いつかライブを一緒にやる!」と口にしていたのですが、それが実現。毎年お忍びで宿に訪れていて、一日限りのライブをするようになったんです。自分も好きだから、誘われたとき行くべきでした…。やっぱり「やりたい!」、「行きたい!」と思ったとき行動しなければ、後悔しか残らないんです。やって後悔するなんてことはないんです。むしろやらないで後悔しているほうが、圧倒的に心残りしてしまうんです。
そして翌朝、帰るときにかずさんは「いってらっしゃい」と送り出してくれるんです。もうやられまくり。毎年行こうってなってから、もう10年が経ちました。途中コロナで行けない年はあったけど、昨年ようやく行けて楽しく美味しいひとときを過ごせました。
今年の家島は…
今年ももちろんお邪魔したのですが、これまでとは少し違いました。かずさんの笑顔も言葉もありませんでした。今年の3月に急逝されたのです。自分と同じ年でバリバリ現役で、SNSではつい先日まで写真をアップしていたのに…。
ショックでした。言葉になりませんでした。かずさん早すぎるて…。まだまだ楽しいことしたかったのに。もっと面白い話聞きたかったのに。かずさんの溢れるアイデア、有言実行の姿勢、絶えない笑顔、あなたのすべてが自分にとってのモチベーションでした。
かずさんの魂は妹のりかちゃん、旦那さんのけんちゃん、お姉さんの息子さんが引き継いでいます。味も変わりません。『志みず』のDNAは、かずさんの弟さんから始まり、かずさんに引き継がれ、そしてりかちゃんへとつながっています。今年も美味しいひとときでした。また来年も行きます。本当は連泊したいとこなんですが…。
そして、家島にいたとき気がついたことがありました。最近「ふぅ!」と、大きく息をついているらしいんです。正直気付いていなかったんですが、昨年映画を撮影してるときにスタッフみんなから「出た!」と言われて初めて気付き、以降自分でも「あ、また出てる」と気付くようになって。ため息じゃないんです。一息つく感じなんです。集中し過ぎて呼吸が浅くなってるような感覚です。それが、まったく出なかった。そっかー、時々は休まなあかんのやなぁ。自分の休まる場所、それが家島なんでしょう。というか、そうなっていったんです。
小豆島へ
で、ですね、家島に行く前に寄る場所も最近できました。小豆島です。小豆島というとオリーブの木がたくさんあって、『二十四の瞳』があって、エンジェルロードがあって、というイメージですが、そこじゃないんです。「MAGO GALLERY SHODOSHIMA」がお目当てなんです。同じボランタリーチェーンの仲間として、見学に行きたくて、毎年行くようになってます。
で、担当の浜畑さんにお会いしていろいろとお話をしたり相談を受けたりしていました。私たちギャラリーオーナーはMAGOの思想を多くの人に伝える役割です。絵の売買は伝わった結果であり、目的ではないというか。小豆島ギャラリーは作品に「小豆島シリーズ」があるわけですし、頑張ってほしいと思っています。
で、彼女に会ってふと気がつきました。あれ、小豆島に来て誰とも話してなくないか? って。もちろんレジとかで最低限の話はしますよ。でも、身上的な話ってしてなくない? そう思ったとき、あぁ、ここはまだ自分にとって観光に過ぎないんだ、旅にはなってないんだ、って思ってしまったんです。この先彼女を通じて広がるかもしれませんが、どうしても観る場所が最優先で来ている島なので、その変化を期待しています。
大阪へ
そして最終日。行きたいイベントが大阪であったので、間に合うように移動してギリギリ時間内に到着できました。トークイベントなんですが、彼とは今から3年前、ちょうど映画『いっちょらい』の撮影時に“ゲリラ炊飯”を新栄商店街でしてくれた子でした。
チャップリンの名言に引っ掛けて「RICE IS COMEDY」を合言葉に、滋賀県の最北端、長浜市の西浅井町でお米を作りながら、まちおこしをしている「ONE SLASH」。彼らの一年を追って完成した書籍を記念して、代表である清水広行くんと、これまた広島の限界集落で“農ライフ”を実践して全国に広げている井本喜久さんの、スジナシトークセッション。それこそ清水くんと会うのは3年ぶりなのにそう感じさせないのは、ひとえにSNSの功績でしょう。
とにかくこの1時間半は、一言で言えば共感しかなかった、です。地域おこし、まちづくり、いろんな言葉があるけれど、すべては「人の魅力」に集約されるんです。もうどんだけ名言出てきたか、どんだけ思考の参考になったか、どんだけモチベーションを上げてくれたか。
自分は農業はしないですが、彼らは農業というフィルターでまちおこしをしているので、根底の部分はまったく一緒なんです。自分がこれまでやってきた行動と、そこから導きだされる思考は間違ってないんだと、遠く離れていても同じ思いでいるんだと、勇気をくれました。
とにかく、ライスワーク/ライクワークのことは一切考えない、でも自分のライフワークをどんどんと考える3日間を過ごせました。とにかく、濃かった。道中すべて地元グルメを食べに食べまくり、小豆島、家島、大阪、走行距離は800キロほどの旅でしたが、いい疲れのまま寝られそうです。
でもって、明日は5時起きで高浜町へGO。ブログ書く前に寝ろって…。
吉田 正義
楽しい旅コメントですね。船でしか行けない瀬戸内海の島にはまだ行ったことが無いのです。RC会長を終えてのんびり旅?でもなさそうな充実旅でしたね。
私はまず 小豆島から攻めたいと思っています。
宮田 耕輔
のんびりしたいところでもありましたが、結局性格的なものもあって、ゆっくりする時間は取れませんでした(笑)