映画祭見学

札幌に行ってきました。今回は「札幌国際短編映画祭」に見学です。今年で19回目、応募総数は3000近く集まるという、とんでもない映画祭で、どんな取り組みをしているのか、どんな進め方をしているのか、とても興味があって、5月に続いて実行委員会の方々と交流をしに行きました。

4日間の映画祭なのですが、初日からアワードの発表と授賞式をするという異例の取り組み。何故かと言うと、翌日から全部で70本以上流れるので、どの作品がいいかなんて忘れちゃうのと、先に知ってから観る方がわかりやすい、ということだそうです。確かに一般の人は全部観るわけじゃないので、どれが受賞作品かわかって観る方が入り込みやすいですよね。これは4日間ある短編映画祭ならではの取り組みでしょうね。
田中監督と
でもって、映画上映だけじゃなく、トークセッションも別会場であって。その一人が田中光敏監督でした。田中監督といえば、『化粧師 KEWAISHI』、『精霊流し』、『火天の城』、『利休にたずねよ』、『サクラサク』、『海難1890』、『天外者』など、名作で大作を次々と発表しています。セッション終わって、ふと目が合って。「あれ? なんで? なんで?」と驚きを隠せない監督(笑)。そりゃあ当たり前だ、福井にいるはずの人間がいるのだから。
田中監督とは、前職時代に『海難1890』のときにインタビューをしたのが最初。それも、インタビュー場所はどこかの事務所とかじゃなく、新栄テラスという(笑)。それも印象に残ったのかもしれないですね。
その次は「日本国際観光映像祭」のとき。「福井駅前短編映画祭」でもずっと一緒で、「日本国際観光映像祭」の言い出しっぺで実行委員長の木川くんから、「次のセッション、田中監督と登壇して司会してくれませんか?」と無茶振り(笑)。そんな無茶振りも対応するので、毎度毎度の映像祭でも当日に「次、司会してくれませんか?」と来ます。大丈夫、任しといて。この2回かなぁ、田中監督と一緒にいたのは。

でも、都度都度会話が弾むので、顔と名前を覚えていてくれていて嬉しいです。「また近くに福井に行くから、連絡するよ」。「絶対すよ!」。そんなこんなの初日でした。
これからえりも町で映画『北の流氷』を製作していくそうで、えりも町の方とも会い、映画を通じての町の人との交流も盛んに行なわれているそうです。役場の方もいらっしゃっていて、また話も弾み「えりも町で短編映画祭したらどうですか?」。「あ、やりたいです!」。また一つ、新しい映画祭が生まれることを願ってます。

映画祭の醍醐味
で、必ず飲み会が催されるのですが、この時間が実は映画祭としての大事な時間です。映画祭のときはみんなで観るので話ができませんからね。話せたとしても幕間の10分程度。腰を据えて話すのはこの時間、ということです。実行委員長の方について行って話をしていると、後から来たのは外国のフィルムメーカーの人たち。そりゃそうだわな、国際短編映画祭だからいろんな国の人が来ます。

もちろん会話はすべて英語。たどたどしいけど、発音もなってないけど、相手にはちゃんと伝わるものです。どうしても発音も文法もしっかりして話さないと伝わらない、と思われがちですが、逆を考えてみてください。たどたどしくて文法も単語の意味も違うけど、一所懸命外国の人が話す日本語を理解するでしょ? それと一緒です。間違えないように、を考える前に、言いたいことを知っている言葉で伝える、それがコミュニケーションの第一歩です。
「君の映画祭は外国の作品応募できないの?」。多くのフィルムメーカーは「FilmFreeway」というサイトから応募するそうで、英語ですべて表記する感じです。確かに周りに英語話す人少ないしな、でも、福井の人に海外の短編映画を観て欲しいな、とも今回思いました。
今回ノミネートされた海外の短編映画は、本当に素晴らしく、そして考えさせることが非常に多いものばかりでした。その国が置かれている環境や、政治的な社会的な視点、そのどれもが違い過ぎていて、純粋に深いんです。こりゃ日本では生まれない、そうとも思いました。それにその国の“今”が映し出されていて、とても生々しく新鮮でした。

映画制作の壁
今回日本のフィルムメーカーさんともたくさん交流したのですが、その一人の言葉が共感できることがあって。日本の短編映画はある程度のフォーマット的なものが自然発生的に生まれていて、ブレイクスルーできるものが出来ていかないと、評価されていかないと、映画自体の衰退につながっていくのでは、とのことでした。
確かにそうなんです。これまでも応募作品を全部観ていくと、どこかしらの既視感を覚えずにはいられませんでした。その大きな理由の一つが「資金」です。今では機材の進化が進み、誰でも映画を撮ることが出来る時代になりました。出来るけど、誰も彼もが資金不足。だから小ぢんまりとした、部屋一つだけで完結する、登場する人数も少ない映画が出来上がります。
海外の短編映画は「結構金かかってんなー」的なものもありました。全部AI で作ったのもありました。資金があるのかと聞いても、やっぱり「いや、大変だよ」と。どの国でも映画制作では資金集めが大変です。田中光敏監督も同じようなことを言っています。

ビジネスではなく文化
現在の国内映画の多くが、人気の小説やマンガの原作が多くなっているのも、資金回収の面で確実性が欲しいからでしょう。そりゃあそうですよね、儲からないものに手は出さないのがビジネスの鉄則ですからね。

そうした面もあるんですが、若い人たちの感性を磨くという面では、チームで動く大切さを知るという面では、そして時代を後世に残していくという面では、映画って最適だと思うんです。事実、田中光敏監督が描く作品は、有名な歴史上の人物を描くのではなく、人知れず活躍し、その後の歴史を変えていった人物と市井の人々の思いを描き、後世に残しています。「ふくいムービーハッカソン」もまた、そうした思いで作っています。
どれだけ映画で「文化」というものを今の社会で作り上げることができるか、どれだけ映画で「文化」というものの大切さを今の社会に伝えることができるか。映画の世界はビジネスの顔もあれば文化芸術の顔もあり、エンタメの顔もあれば街のアーカイブ的な面も、そして人材育成的な面もあるような世界です。華やかに見える世界でも、置かれている状況はそんなに甘くありません。まるでタイトロープの上を歩くような世界なんだと再確認した1日目でした。
2日目
2日目もまた、いろんな人に出会う機会をくれました。一番ビックリしたのが、「MIRRORLIARFILMS」という活動をしているプロデューサーさんが、自分や自分たちの活動を知っていたこと。

「MIRRORLIARFILMS」って何やねん、という方もいるでしょう。これは俳優の山田孝之さんなどが始めた短編映画制作プロジェクトです。サイトでは、
《MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)》はクリエイターの発掘・育成を目的に、映画製作のきっかけや魅力を届けるために生まれた短編映画制作プロジェクトです。年齢や性別、職業やジャンルに関係なく、メジャーとインディーズが融合した、自由で新しい映画製作に挑戦します。
おぉ、ムービーハッカソンと同じ価値観や! ということで、今回のプロジェクトを簡単に言うと、名だたる方々が映画撮ってるプロジェクトなんです。今回は秋田市と組んで制作したそうで、そのうちの作品が、監督・小栗旬さん、主演・藤森慎吾さん! 監督脚本・浅野忠信さん、主演・阿部進之介さん! どれも秋田市で撮影してる感じでしたねー。いやこれ福井でやりたい! 「一度、福井県知事と会わせたい、と言われたことあるんですよ」。まだ実現してないんですか、それならその機会作ります! 「福井でやりたいですね」。やりましょう! いつでも来てください!

今回秋田市で、ってことだったので、制作に携わったのが、秋田市の映像制作会社「株式会社アウトクロップ」。この会社を立ち上げたのが、栗原エミルくんと松本トラヴィスくん。この二人とは「日本国際観光映像祭」で知り合って、当時まだ学生だったんですが、それから会社を立ち上げ、そんでもってミニシアター作るし、カフェも宿も作るし、勢いが半端ない二人です。ホント久しぶりに会って、秋田市での「MIRRORLIARFILMS」を間近で見てて、その熱量を話の中から感じ取りました。いや、出会えてマジ良かった!

それにね、新栄商店街出作った映画『いっちょらい』の主演を務めてくれた、“一瞬福井市民(笑)”の松林慎司くんとも会えました。ジャパンプレミアといって、本邦初公開の作品にも出演していたので、来場してたんです。今、自分の地元で映画『かぶと島が浮く日』の製作をスタートさせたので、応援していきたいと思います。
3日目
映画祭最終日は丸々映画館の中に。この映画祭は約2時間の間で5〜7本の映画を1セット、入れ替え制でまた入る、という進め方です。プレミアチケットは一度出ても席を押さえることができるそうです。もうね、毎回行列ができているんです。東京のフィルムメーカーもビックリしていました。「東京のミニシアターでも映画祭でもこんなの見たことない」って。それくらい映画文化が根付いているんですよ。素晴らしい。福井もこういう街にしていきます。
2時間の長編作品を一つ観るのもいいですけど、映画の楽しみ方として短編5本というのもありだと感じました。映画って2時間ものがすべてでもないですし、良作は短くても心に残ります。よくよく考えたら、昔はテレビでも30分ドラマってありましたよね。最近ではテレビ東京が15分ドラマを作り始めていで、仲村トオルさんがいい味出してます。
2時間という制約に縛られて、ただ無駄に長くしなくても、テンポなどを考えたらもっと良くなるのになぁ、という映画もあります。まだ短編映画は劇場公開という流れになっていませんから、映画祭を映画館で上映、という段階です。最近、東京では短編を劇場公開したところもありますし、サブスク的に短編映画を流すというアプリもできてます。そして今回の「MIRRORLIARFILMS」も、大きな流れの一つになっていると思います。
つまり、今、長編から短編へと移行していく段階にあるんではないかな、と思っています。徐々にではありますが、そう向かっていくんではないかな、と思っています。この文化の流れを、国を挙げて持っていければ、感性が高まって、やがて映画や映画以外のビジネスへとつながっていってほしい、そう願っています。
今回上映された作品で個人的に好きだったのは、ホセ・マリア・フローレス監督の『THE COMPANIONS』、マーティン・アミオット監督の『BLITZMUSIK』、ダリア・カシチェワ監督の『ELECTRA』、chavo監督の『DING DONG DITCH』、角谷勇吏監督の『ドーパミン』、かな。11月1日からオンラインで全部観れるので、是非鑑賞してみてください。短編映画のイメージが変わります。

映画人におれはなる
最終日の打ち上げはとても盛り上がりました。全国、全世界の、映画という共通言語を持った人たちとの会話は、想像以上に自分たちのつながりを深く、濃くしていってくれました。北海道で勝負する俳優さんと未来を語りあったり、アイヌ文化に惚れ込んで北海道に移住した俳優さんとアイヌ話で盛り上がったり、アクション映画の殺陣師を福井県のアクション映画の人たちとつなげたり、それぞれの地域での映画映像事業について何時間も話したり。さすがにこの場では、この日にファイナルステージを決めた日本ハムファイターズの話は出なかったです(笑)。それはそれで涙ものの進出だったんですよ(泣)。


自分自身そうは思っていませんでしたが、周りから見れば自分も充分“映画人”なんですね(汗)。前職を辞めたことで、法人の定款にも映画事業を組み込みましたし、腹くくって行きます。

まずは11月30日の「福井駅前短編映画祭」を盛り上げていきます。皆さん是非お越しください。来年も「札幌国際短編映画祭」に行きますし、他の映画祭にも積極的に見学に行こうと思います。「福井で映画」と言ったら自分の名前が出てくるよう精進していきます。是非応援してくださいませ!
ただいま協賛企業も募集してます。1万円でエンドロールとパンフレットにロゴを掲載&映画祭チケットを贈呈してます。個人協賛は5000円でエンドロールに名前掲載&映画祭チケットを贈呈してます(10月25日まで)。
しかし…、北海道の人はよー飲むわ。最後寝落ちして起きたら朝4時…。まだまだ続いてたし、タフだねぇ、北海道の人は(笑)。
最後に、今回食べたもの挙げてきます。やっぱ北海道は美味しいね!









札幌国際短編映画祭の久保 俊哉です!本当に参加していただいて嬉しかったです。この世な地域間連携(国際的にもクレルモンフェランやカリフォルニアの映画祭など)だいじにしております。レポートもよくまとめられていて感激しました。(自分たちは映画祭作るまでで力尽きております(^_^;))ぜひ、福井にも伺いたいですし、今後の発展も期待しております。またお会いする日を楽しみにしております!感謝。
久保さん、本当にお世話になりました! 福井にルーツがあるので是非に福井にお越しください!