原研哉さん基調講演
先日、原研哉さんの基調講演を聞いてきたのですが、まぁ濃かったです。今後の日本が取っていく道筋を、歴史から紐解いて分かりやすく説明してくれました。一言で言うとグローバルとローカルは分別されるものではなくて、相対的に高まっていく感じなのだそうです。外に広がれば広がるほど、知られていくから固有の場所がより際立ってく、というか。
面白い視点だな、と思ったのが、ユーラシア大陸を縦にして見てみる、ということ。そうすると、日本は大陸の受け皿みたいな位置になっていて、つまりは文化が全部日本に集積されてきた、という感じです。確かに文化は全部大陸から来てますからね。
しかし、絢爛豪華な輸入文化が一度断絶される事件が起きます。応仁の乱です。10年間京都の街が、それも今とは比べ物にならないくらい小さなエリアで戦争になってるもんだから、ほぼほぼ破壊されてくわけです。これには別の見方もあって、貴族が疎開していくわけですから疎開先で京都の文化が根付いていったんです。一乗谷がまさしくそう。103年続いた一乗谷文化は、「第2の京都」と呼ばれたほどに華やかだったようです。一般市民にまで広がっていたのだから、ある意味福井の文化的DNAは応仁の乱によって作られたようなものでしょう。
実はこのとき、当の京都では真逆の現象が起きます。
将軍足利義政は戦争が嫌になって遠くに建物作って隠居しちゃいます。その建物こそが銀閣寺。その茶室はとてもシンプルに作られたのでした。ですが、世の人々は「めちゃカッコよくね?」ってなるんです。あらゆるものを排除した後に残った美。千利休によって完成される「わびさび」の世界観。実はこれが今の日本の美意識の原点になっているのだそうです。そこには緻密、丁寧、繊細、簡潔という、どの国にもないセンスが組み込まれているんです。
何もないからそこに想像力をかきたてるというか。確かに日本人の空気感ってそうですよね。「空気を読む」って、それに近いですよね。見えない部分をおもんばかるような。応仁の乱をそういう側面で見れたのは勉強になりました。西洋でミニマリズムが勃興するのはそれから300年後のこと。かなり早い段階で日本は世界に先んじて到達してるんです。それが伝統工芸品にもエッセンスとして入っているのだから、世界が注目しないわけがないんです。
福井の工芸、北陸の工芸
「千年未来工藝祭」、「RENEW」。これは福井の伝統工芸をより広めていきましょうと、民間から立ち上がった企画です。福井にいるとこれらはわかるのですが、ではお隣は? と聞かれるとよほどアンテナ高くしてないと知らない、ってのが実情だと思います。石川県では「KUTANism」、「金沢21世紀工芸祭」、富山県では「高岡クラフト市場街」、「ガラスフェスタ」があるんですが、どのエリアも伝統工芸が今も息づいています。
ただ、それが世界に届いてないんです、今の段階では。日本という国は知ってるけど、そこまで深くは知らないんです。アニメなどのサブカルチャーは抜群の認知度ですが、伝統工芸品などのハイカルチャーはまだまだ。それを、「北陸のみんなで団結して発信していきましょう」ってスタートさせたのが、北陸工芸プラットホームなんです。上記のイベントに加え、3県で100ヵ所の工房で見学できるようにして、北陸=伝統工芸の街を世界にアピールしていこうとしています。一人ではできないけど、みんなで集まればそれは可能になるんです。「ONE HOKURIKU」ですね!
何故北陸に?
ところで、何故北陸に伝統工芸品が集まってるのか、ということが疑問に残っていたので、事務局の方に質問してみました。
伝統工芸品は全国にたくさんあったんですが、第二次世界大戦後に工業化が一気に進んで、太平洋ベルト地帯はその産業よりも他の産業に切り替わって行ったそうです。言うなれば工業化から取り残された日本海側。“裏日本”なんて呼ばれたこともありました。結果、昔からの産業はそのまま残り、気が付けば周回遅れの街になっていました。しかし日本自体が工業化フェーズを過ぎた時代に突入し始めたとき、本当の日本が持っていた技術や伝統が見直されて、かつグローバル化で伝統工芸品に世界が注目し始めたのです。
じゃあそれが残ってるのどこ? ってなったときに北陸が再評価されるんです。北陸工芸プラットホームは今から当たり始める光を世界にきちんと伝えていく役割を担うんだろうな、って感じました。
トップランナーに、北陸はなる!
今や時代は少子高齢化。ものづくりの現場が直面する人材不足問題。歴史も伝統も文化も備えているのに人が集まらないのは、ひとえに「儲からないから」にあると思います。これまでのやり方では確かに難しいかもしれません。だから、工芸品単体ではなく、工芸品を生かす舞台が必要になる、と言ってました。ただ作るだけじゃなく、どんなストーリーがあって、どんなシチュエーションで使うのか、それらが見えることで価値が付加されていくんですね。
最後に原さんは言ってました。「人口が減少してつつましくなる時代に、どうやって稼ぐかよりも、どう誇りを持って生きていくか」と。誇りって年月を重ねていくことでより強く、より純粋なものになると思うんです。北陸の風土は1500年もの間積み重ねてきた誇りがあります。どこにもないものだと思います。大量生産大量消費の時代は過去のもの。周回遅れだった街は、この先の時代における世界のトップランナーになりそうな気がします。北陸に、福井に生まれて良かったと本当に思います。
おまけ~小松うどん? 小松うどん!~
今回、駅を歩いていて、無性に気になったものがありました。小松うどんって知ってます? 今密かにブレイクしてます。かの松尾芭蕉も300年以上前に食して絶賛したとか。でも、小松うどんって、何が違う? ということで、小松うどんの定義は以下の通りです。自分は学生時代山梨の都留に住んでいて吉田のうどんで育ったので、ぶっとい、コシのありまくりなのが好きですが(#^.^#)