ロングアンドワインディングロード
日本旅行ワールドpresents「ふくいを旅ろう」第2弾は、三国から越前海岸を下って敦賀までの、ロングアンドワインディングロード。福井県って17市町ありまして、その半分以上10市町は海を持っています。遡れば山地の大野も当時(っつっても大野藩の時代ですが…)飛び地として海を持っていました。山の中で鯖の丸焼きを食べる半夏生さばの風習はここからきてます。
父が三国の生まれで、取材などでも何度も足を運んで来たので、知ってる方も多くいらっしゃいます。三国と言えば東尋坊と越前がにが超有名ですが、自分にとっては北前船での文化の香りの方が印象にあります。その名残を探してきました。
今回も『日本旅行ワールド』さんのスポンサードでお送りします! テレビでも福井の旅行業界について話されたり、旅行のことならなんでも知っています。こちらもビビるほど、知識は半端ないです!
迷路な遊歩道? 健康になる遊歩道
朝一番で向かったのは荒磯遊歩道。海沿いに句碑が点在する道で、49年生きてきて実は初めて歩きました。どうしても車移動がメインになっちゃってる福井だから、歩くの億劫な人多いんですよねぇ。遊歩道とかになると、「歩く」ってことをメインにするので、一瞬たじろぐんですわ(^^; でも今回は旅のブログ。歩かなければ伝えられません。ということで歩いてみました。
波の音と潮の香り、海岸線から離れた場所に位置してても感じます。いろんな文化人の句碑が点在しているんですよ。しょっぱなは高見順。当時の福井県知事の息子さんやったんすか。そして東大出身ってエリートやったんすか。
その後も、則武三雄、林光雄、石原八束、三好達治、そして高浜虚子&伊藤柏翠&森田愛子と、次々に出てきます。気がつけば東尋坊。コロナで出られなくても、あまり人が通らないし、海からの風も来るし、マスク外して空気の匂いを感じながら、散歩がてら歩いてもいいかも。
帰りは他の道にも句碑あるんちゃうかと思って歩いてみたら…。迷った…。車道に出てしまって、別の道を探してたら、元の道に戻ってきて、結局1時間くらい歩いてました。最近というかずっと運動不足だし、ちょうどいいロングアンドワインディングウォーキングでした。
製塩所跡地とか、石器時代の遺跡もここで見つかってるようです。三国のこの辺りって全部岩場で、人が活動するには不向きな場所ばっかりなんです。でもこの製塩所跡のところだけが何故か平坦な場所になっていました。平地がどれだけ人間にとって必要なものなのか、ってのは、この先訪れる場所でよく感じていきます。人は平地なしには生きていけない、というか。
三国の味。思い出の味
ということで、小腹も空いたところで、行くならハンバーガーでしょう。北前船で隆盛を極めた名残がある場所、森田銀行周辺に、もう20年近くやってるのかな、『三国湊座』の三国バーガー。福井のビーフ使って福井の米粉のバンズ使って、三国のらっきょうも使ってと、福井オリジナルバーガー。これ、マジ旨いすから。
で、おやつは鶯餅が有名な『大和甘林堂』で、カステラなんです。自分にとっては鶯餅じゃないんです、このお店のイメージはカステラなんです。なんでかって? 実は父親の生家が、こちらの斜め前にあったんです。おじいちゃんはカニを入れる竹籠の職人でした。家に入ると土間があって、ここで作ってたそうなんです。生まれる前に亡くなっていたので、その風景を見ることはなかったのですが、ここに来ると三国祭りの山車(普通はだし、っていいますが、三国の人はやまって言います)が目の前を通って、カステラを食べた記憶が残っています。そして三国の人と話すと必ず出てくる伝説の食堂『辻食堂』。ここの中華そばが今でも父親にとっては一番の味だそうです。
自分はこれ以外にここでの記憶を形にしました。自分の家を作るときに三国の家をイメージして作ったんです。何をするわけではないんですが、土間のある家を、と、当時は入り口がすべてガラスの引戸だったので、扉8枚分の入り口を、と設計士さんに伝えました。さらにエアコンがいらないように、とも伝えたので、相当苦労したと思います(笑) この家が出来て以降、他のメーカーさんも似たようなのを作ってたのを覚えてます。まあ、当時にしてみたらかなり異色な存在、でも民家風という原点回帰的な家だったと思います。
あと、龍翔館という西洋風の造りの博物館が丘の上にあるんですが、デザインの元ネタは龍翔小学校という建物。こんな小学校アリなん!? ってくらい、異色中の異色の存在。設計士はエッセルさんという外国の方。ちなみにこの方の息子さんの絵は皆さんも見たことあるはずです。だまし絵で有名なマウリッツ・エッシャーさん。そのお父さんなのだそうです。これからリニューアルしてくそうで、新しくなったらまた見に行ってみます。
福井県外からこのブログを見ているあなた! 福井に旅したくなったら聞いてみてね!
文化の香り、歴史の香り
三国って、やっぱり感じるんです。どこか上品な空気を。それって、文化があったからだと思うんです。で、文化ってどうしたらできるかって、生活に余裕があることだと思うんです。言うてしまえばかなり裕福だった、ってこと。地図見ればわかりますが、福井県のど真ん中を流れる大きな三つの川(九頭竜川、足羽川、日野川)の合流地点ということもあって、水運としては重要な場所で為政者の庇護もあったでしょう。極め付きは北前船です。幕末から明治期にかけて関西と北海道を結ぶ海運ルートの寄港地の一つでもありました。
そりゃあ旦那衆はたくさんいましたよ。文化も育つっちゅうもんですよ。哥川という、遊女兼俳人が生まれたのも、そういう土壌があったと思います。知性と色気を兼ね備え、句会にも参加したりしてたそうですから、色街文化も普通に受け入れているおおらかさが三国にあったんでしょうね。湊座の隣にある旧岸名家の当主は「日和山吟社」と称して句会をよく開催していたそうで、2階にはその当時のイメージを再現してました。哥川が訪れていたといわれるのも、この場所のようです。
美人薄命。俳人・森田愛子
ちなみに、旦那衆はお妾さんも普通に抱えてましたよ。さらに家まで与えてたってんだから、よっぽどおおらかだったと思います。妾を持つのは男の甲斐性ってね。それくらい財と器を持ってる男、ってことですから。そんな男になりたいです。こういったDNAは、現代も受け継がれていますよね(意味深)。
まぁ、そこはおいといて、実際に三国が生んだ美人俳人も、そういう家庭環境から出てきました。森田愛子という俳人がそうで、彼女の母親は森田銀行を経営していた森田三郎右衛門のお妾さんでした。当時の森田家は超絶お金持ち。家を持たせ、そこで暮らさせてたってんだから相当です。当の愛子は女学校の頃から相当目立ってたそうです。超才色兼備ってやつですね。皆から慕われてたそうですが、出自がそうでも関係なしってのは、森田家の威光なのか、彼女のデキなのか。とにかく当時からあか抜けてたってのはあるでしょうね。モノクロ写真見ても、今普通にいても遜色ないくらいの顔とスタイル。でも、20歳で結核に…。
療養のため移り住んだ鎌倉で伊藤柏翠と出会って、俳句に出会うんですねぇ。愛子が三国に帰っても会いに来るんですねぇ。それで一緒に住んじゃうんですねぇ。結婚も考えてたんですけど、反対した人がいるんですねぇ。
それが師匠でもある俳句の巨人・高浜虚子です。余命幾ばくもない愛子を巡り、争奪戦が俳句を通じて静かに静かに行なわれてたそうです。高浜虚子が愛子の死後に発表した小説『虹』は、モデルが愛子だったそうです。
ちなみに、伊藤柏翠は愛子の死後も愛子の母親の面倒を見ていたそうです。お妾さんって、旦那さんが亡くなったら、その家からの援助は一切ストップ。そりゃそうだわな…。で、生活しようと二人で料理屋も始めたそうです。小説のタイトルにちなんで『虹屋』としたのですが、当時はツケで飲む人が多かったそうで、立ちいかなくなってしまったそうです。
ってな話を、愛子の生家であり、『虹屋』があったその場所で聞きました。この場所、今は古美術ギャラリーになっていまして、その名も『虹屋スクエア』。なるほどここにつながるのか、と震えるほど感心しました。
この全部のエピソードを話してくれたのが、このギャラリーを運営している二軒隣の『近藤古美術』のお母さん。お年は召されてても、なんとまぁ、スラスラとお話をされる。いや面白すぎて、こっちも聞き入ってました。一番驚いたのが、かなり前に『近藤古美術』さんを取材したんですけど、そのことをほぼ覚えてるってとこ。マジビビりました(汗)
三国の古美術ですから、相当なものがあります。芸者さんがたくさん写ってる写真とか、『三国座』の写真とか、三国焼とか…。って、ちょっと待った。それは何?? 『三国座』ってのは当時芸者さんが踊りを披露する舞台があったそうなんです。で実は、ここでの踊りが、京都の都をどりの開催のヒントになった、って京都の人に言われた、ってことを言うてました。そうなん!? そしたら芸者さんもかなりいたってことだし、やっぱり相当文化レベル高かったってことやん!
それに、三国焼ってのも初耳。古九谷に近いんだけど正真正銘三国で作られていた焼き物が存在していました。何度もオーナーが変わっては立ちいかなくなった、っては言うてました。そういう焼き物の歴史もあったんですね。小さい器が多いのは、三国は煎茶文化が栄えていたからだそうです。抹茶じゃなく煎茶道。それまた渋い。この飾ってるの欲しいけど、結構高そうや…。
まだまだあるんですよ、三国は。文化的なのでいえばブルーケーキとかブリリアントハートミュージアムとか。でもそこまで行ってたら越前海岸下れない…。戸田先生、また今度お邪魔します! ということで、本当のロングアンドワインディングロードを爆走します。
<破>へつづく