ロータリークラブ

「職業奉仕」という言葉を聞いたことはありますか? よっぽどのことがない限りないと思います。ロータリークラブでのみ使ってる言葉だと思うので。あ、これでもロータリアン歴15年です。意外ではありますが(笑)。いうても名ばかりって感じでもありますけどね…。
それでもいろいろ役回りをしてきました。何していいかわからなかったけど会長もしたことあるし、また来年会長の役割が回ってくるので、「何していいか」を「何かする」に変えようと思案中です。でもって、今年は奉仕プロジェクト委員長という役割です。
ロータリークラブって、根幹的なのが奉仕活動といわれる事業でして、地域のために「いいことをしよう」と、それぞれの地域でいろんなことをやっています。世界的にはビルゲイツさんメリンダさん夫妻と共にポリオ撲滅に取り組んでいます。
組織の弱体化は世の常
2025年現在では日本国内2294クラブ、82877人がロータリアンとして所属はしています。が、かなり減りました。一番多い時期で1996年あたりに13万人強いました。あ、日本の会員数が減っているのであって、世界的に見れば横ばいです。純粋にクラブがなかった国にクラブができて、その人数が増えているだけです。
ちなみに組織の人数が減るのって、ロータリークラブに限ったことではありません。いろんな団体はことごとく人が減っています。組織って「組織の維持」をしだしたら下がるしかないのは世の常なのだから。ロータリークラブも100年以上続いていますがご多分に漏れず、です。
だからどの団体も「人を増やせ」って言葉ばかり。その言葉を使ったらますます減るのに…、とは思っています。“目的”を伝えずに“手段”だけを講じても、例え上手くいっても短絡的になってしまうんですね。長期的に組織を作っていくには、組織の本質を語ることが必要なんです。目的でもあるし、根幹でもあるものを。
ロータリーの根幹?

では。ロータリークラブにおける根幹って何だろう、というのを話し合う会合が、本日10月5日に行なわれました。「職業奉仕委員会担当者会議」という長々しい重々しい感じの会議(笑)。ま、そんなに堅苦しくはないですよ。「職業奉仕について考えましょう」というミーティングです。
はい、ここで登場です「職業奉仕」。先ほども言いましたが、ロータリークラブでしか使わない言葉だけに、奉仕活動が主たる活動なだけに、「これぞロータリークラブの根幹だ、金看板だ」と思っちゃうわけですよ。実際自分もそうでした。
ただ、問題が、とてもとても大きな問題が1つあるんです。
「職業奉仕とは何ぞや」。
根幹ちゃうんかーい! 金看板ちゃうんかーい! ってツッコミは止めて(笑)。日本のロータリアンはみんなわかってるんです。わかっているけど、わからないんです(笑)。もうね、ロータリークラブの不思議中の不思議(笑)。誰も職業奉仕に対して明確な言葉を持っていないんですよ。
奉仕プロジェクト委員会の中には4つの委員会があって、社会奉仕、青少年奉仕、国際奉仕、そして職業奉仕があるんですが、前3つはわかりやすいんですよ。ターゲティングができているから。「社会に奉仕」、「青少年に奉仕」、「国際に奉仕」って、◯◯「に」奉仕って言えるんですが、職業奉仕だけは「職業に奉仕」って言えないんですよ。だけど委員会には名前を連ねていて委員会メンバーも配置されている状況。
×「職業に奉仕」
ロータリークラブを知らない人にとったら「何それ?」ってなるでしょう? 大丈夫、ロータリークラブ内でもそうだから(笑)。何故委員会が単独であるのか、ほかの奉仕委員会と同じように何か事業をするのか、ってなるじゃないですか。
でもね、「職業に奉仕」ではないんですよ。これだけが「職業を通じて地域に奉仕する」という委員会なんです。じゃあ、それって社会奉仕委員会と何が違うの? ってなるでしょう? なるんです。なるんですよ(笑)! だからますますわからなくなるんです。
だから担当者会議が開かれるんです。「職業奉仕とは何ぞや」と、新しい解釈を創り上げる会議が。ってそのつもりで参加しました。そりゃそうだ。入会してからずっと疑問に思っていたことですし。でもね、新しい解釈ってのが問題で。新しい解釈ができない面子なんですよ、ロータリークラブってのは。変化を著しく拒む世代しかいない、って問題です。
100人近く会場にはいました。でもそこには自分が54歳でも年下の部類に入る、つまりはお年を召された方たちしかいません。むしろ「会議あるから行かなあかんなー」くらいの感覚です。「3時間をその会場にいて過ごせれば出席なるしなー」くらいの感覚です。見渡してみてそんな感じでした。事実、各テーブルのコメントもそうでした。
変化するために
人は変化することを一番拒むんです。「ずっとそうだったから」、「これがこの会の常識だから」。こういう言葉って、いろんな組織で聞きませんか? 長ければ長いほどその言葉が大きくなって、人は動くこともできず、どこかで諦めて何もしない、というの、ありませんか? それが停滞と縮小につながるんです。
かといって、何でもかんでも変えればいい、って話ではないです。変えるには変えるなりの理由が必要で、その理由が真っ当であればあるほど、本質を突いていればいるほど、「変えなきゃ」って動き出すんです。これが、意味もなく、ただ我欲で変えたいという流れならば、それは混乱と破滅しか呼び込まないです。ここでも本質は大事ですよ。
職業奉仕。この意味を、日本のロータリアンが全員理解できるような言葉に置き換えることが、ロータリークラブの行く末を明るくする、と思ったんです。その意志が、この会を開催したスタッフからも感じられました。
もちろん、この会だけで変わるなんて思いません。ただ、この場所で話し合ったことをちゃんとフィードバックする必要が、この場所にいた人にとってはあります。そのための会議なのだから。だから自分はブログで書くことにしました。
職業奉仕、いらない論

今回、基調講演で来られたのは、群馬県前橋市のロータリアンで、国際ロータリーでも活躍してきた本田博己さん。会報誌の委員もされていて、会報誌『ロータリーの友』でも職業奉仕について何度も寄稿されています。
その方がおっしゃっていたこと、端的に言えば「職業奉仕って言葉、いらないんじゃない?」って。それも、自分の体験だけではなく、これまでロータリークラブを創り上げてきた100年以上前の人たちの、ロータリークラブに対してのあり方についての文献を読みまくってからの言葉だから、なおさら重みがありました。
そうなんです、国際ロータリーにおいて今は職業奉仕という言葉はないんです。日本だけなんです。もはや存在しないものを「昔からあるから」の一言だけで存在させるって、何か変なんですよね。
そもそもですが、各クラブで行なっている奉仕事業は、会員それぞれの職業的スキルを事業の一部に活かしながら、手作りで行なっているんです。それは地域に対して、地域の子供たちに対して、地域に住む外国の方に対して行なっているのならば、職業奉仕でもあり、社会奉仕でもあり、青少年奉仕でもあり、国際奉仕なんですよ。
奉仕事業って、それぞれの地域に足りないものがそれぞれに違うわけだし、ターゲティングすればするほど、その事業の対象からこぼれ落ちる人たちもいるわけで。なので、わざわざそれぞれの委員会を作る必要性がないんでは、っては思うんです。
奉仕の理念に置き換え

そのブレイクスルーをするのが、「職業奉仕って枠自体いらないんじゃね?」っていう取り組みで。それが達成すればあとは、日本人のお得意な”なし崩し”で委員会自体が改編されることになるんだろうな、ってことで。改編した後に残るのは、まさにロータリークラブの根幹「奉仕の理念」です。言うなれば奉仕プロジェクト委員会は「奉仕の理念プロジェクト委員会」に名前を変え、その下の委員会はない、という感じかな。
本田さんが伝えたかったのは、職業奉仕という言葉は「奉仕の理念」に置き換えられるということ、そして「奉仕の理念」とはそれぞれがそれぞれに自分の仕事を通じて実践すること、その結果が、いわゆるここで語られる「職業奉仕」につながっていく、ということでした。
やはり、職業奉仕とはロータリークラブの根幹なんですよ(笑)。言葉は違うけど、突き詰めればそうなるんですよ。間違ってはいないけど、言葉は違う、ってなイメージ?
そのあとのワーキンググループで話し合ったことが本質だよな、って思いました。結局「目の前のお客さんに喜んでもらうことを一所懸命する」ってことが「職業奉仕」につながっていくんであって。でもね、それってロータリークラブだけの話じゃあない、すべての組織、すべての社会、すべてのビジネスにおいて当たり前のことなんだよ、ってことです。
ノブレス・オブリージュ

つまりですね、職業奉仕とかなんとか言っていることって、ぶっちゃけた話、ロータリークラブにおける”言葉遊び”のようなもので、社会生活においてはみんながそれを目指していることなんですよ。
「お客さんに喜んでもらう」行為の連続が、結果的に売上につながり、その連続が、人を助けるスキルにつながっていき、その連続が、地域において素晴らしい御仁と尊敬されるのであって。そういう人たちの集まりこそがロータリークラブなのであって。そういったロータリークラブの集合体が国際ロータリーなのであって。
なので、現在ある職業奉仕委員会というのは、対外的に行動する委員会ではなく、対内的にそういうノブレス・オブリージュな意識を高めましょう、と啓蒙活動をする委員会なのでしょう、と捉えることもできます。
ということはですね、この話の流れで行けば、ロータリークラブが最初にイメージしていたノブレス・オブリージュな会員が減っている、ってことになります。啓蒙活動しなければいけないような、「お客さんに喜んでもらう」商売をしていない会員が増えている、ってことになります。
そこまで売上至上主義的な会員ってはいないですが(いないと信じていますが)、でもしかし、どこかでぬるま湯的に組織に属しているって感覚はありませんか? まあ地域の仲良い皆さんがいるわけだしね、ってな感じで。「売上上がるよ」って言われて参加して、わざわざ波風立てるようなことはせずに飄々とクラブに属して、何かあれば手伝いますよー、的な。まぁまぁ、それもありでしょう、とだけ言っておきます。
アウトプットは必要

多分そういう人たちは職業奉仕という言葉に対して深く考えたことはないでしょう。普通は考える機会もないので、「昔からあるよなぁ、なんか不思議だけど」くらいでいると思います。もちろん全員が全員深く考えろとは言いませんが、疑問に思うくらいはあってもいいのかな、とは思います。
今回はそういういい機会に恵まれたと、素直に思います。だから今回参加された方は自クラブに帰って、今日あったことをアウトプットしてほしいな、と思います。自分みたいに長々と書く必要はありません(笑)。ただ、インプットしたものをアウトプットすることで記憶に定着できるんです。
ワーキンググループで話し合った内容はとても濃いものでした。既存の「日本固有の日本古来の」職業奉仕の考え方もあれば、世界に共通するような考え方もあれば、新しい価値を創造する考え方もありました。あっという間に時間が過ぎて、まだまだ話し足りないくらいでした。
先ほども言いましたが、日本のロータリークラブは世界でも屈指の「会員激減地区」です。ここでロータリークラブ自体に対してパラダイムシフトを起こすことが、存続する最後の機会なのだよな、っては思っています。ホントにそのブレイクスルーが、職業奉仕という存在の明確化なんだなぁ。
世は無常である

こうしたことを書くと、”古い方”からはこんな言葉が飛んでくるでしょう。「お前は何を言ってるんだ」と(笑)。委員会の方もこの会を作り上げる際にそう言われるんだろうな、って、同じようなことを言ってました。
でも時代は変わっています。仏教の言葉に「無常」という言葉がありますが、それは「永遠に変わらないものなどない」ということです。この世の中すべてが「無常」なんだ、ということを認識しましょう、「無常」の反対語「常住」を人は求めるけれど、それこそが欲望であり、それを断ち切ることが大事なのです、と、お釈迦さまは説きました。
「組織を維持したい」、「昔からのものは変えたくない」、「常識だから変える必要がない」。これらはすべて「常住」への欲です。変えるべきところは変える、流れに逆らわない、そうやって生きとし生けるもの(人も組織も)は生き長らえるのです。
自分はロータリークラブ好きですよ。特にEクラブは会員が同じエリアではなく、全国に広がっているので、いろんな価値観の人に出会えるということと、それこそノブレス・オブリージュを体現する、体現できる組織だということと、出会った人たちや知った情報知識を自分の職業や人生にフィードバックできるということと。
好きじゃなかったらここまで書き込まないです(笑)。変わってほしいと思うから自分のブログを使ってまでも書き込むんです。まったくロータリークラブに関係ない方々ばかりのところに書き込むんです。
提案してみる

一つ提案があります。これは会員減少しているクラブだからできることです。奉仕プロジェクト委員会の4つの委員会を一つにまとめることです。
先ほども書きましたが、地域によって求められることは違うし、サポートできることも違うし、ターゲティングも違います。全方位的に奉仕活動をするならば、奉仕プロジェクト委員会は「奉仕の理念プロジェクト委員会」として、クラブで一つの奉仕活動に従事するんです。
これまた先ほども書きましたが、日本国内では会員数が減っています。でもクラブの数は、実は国内では横ばいなんです。つまり、一つひとつのクラブの会員数が減っているんです。ということは、何度も同じ役をすることになるし、掛け持ちもすることになるし、そもそも会として機能すらしなくなります。
だから全部統合してしまうんです。名称も取っ払う。全部無くしてしまう。例えば「◎◎奉仕委員会」の会合があれば、「奉仕の理念プロジェクト委員会」として全部参加すればいいだけです。これは人数が少ないクラブだから、掛け持ちしなければいけないから、それが可能になるんです。
「だって人少ないもん。奉仕活動の内容は4つのうち3つくらいに関わっているもん。なら1つの委員会でええやん。やりたいのは地域に対しての奉仕活動であって、言葉遊びには付き合ってられまへん」。
と言い切れるんです、人が少ないから。ロータリアンでいようとするのならば、そのくらいのドラスティックな変革は必要です。人の少なさをプラスに変えて、社会とのつながりを深くすればいいだけです。だって、そもそもロータリークラブって、ノブレス・オブリージュの人たちの集まりなのだから。
何のための所属か
本来ならば合併すればいいのに、と思うんですが、ここがまた問題(笑)。「プライド」という「欲」が邪魔をするんです。「長年やってきたクラブだから」、「あのクラブの人とは一緒になれない」、「そもそも何で一緒にならなきゃいかんの」等々。
これは会議でも本田さんが問いかけていました。「あなたは何のためにロータリークラブに入っているのでしょうか?」。仲良しクラブでいたいから? 何かに所属していないと寂しいから? 付き合い程度だから? 老後の余生は穏やかに波風立てずに過ごしたいから?
何かに所属するということは、所属するという「自分の決断」があるからこそ成り立っています。誰の責任でもありません、自分の責任で決断して所属しているんです。つまりは所属するということはその組織の何らかに対して責任を持つということです。
「人に言われたから」、「付き合いだから」、「お客さんで断れないから」など、理由はあるでしょう。しかし所属することは自分の意志です。所属する組織が瓦解寸前ならば、茨の道を進んで立て直すのか、諦めて滅びるのを待つか、それもまた自分の意志です。
ロータリークラブって、自分のビジネスにフィードバックできると本当に思います。それは目の前の売り上げのことではありません。ビジネスを強靭化する「理念」と「思想」がフィードバックできる組織だと思います。
そのためにはやっぱり、なあなあで活動するのではなく、どういう組織か、どういう理念か、どういう思想か、ということを理解することが大事です。その根幹が「職業奉仕」なんだろうと感じました。やっぱり職業奉仕はロータリークラブの根幹、ということで、自分の中で腹落ちしました。
ロータリークラブの皆さん、皆さんにとっての「根幹」はなんですか?