今年は忍者の街に

今年も参加しました「日本国際観光映像祭」。もう何回参加したろうか。大阪、大阪、清水寺、与論島、琵琶湖、阿寒湖、真庭市。このイベントのおかげで日本中いろんな場所に旅をしに行けています。
ちなみに「日本国際観光映像祭」とは、世界中からその土地の観光映像を募集して、今年の良作を決める映像祭です。いわゆる映画祭の観光映像版、といったところです。
参加するきっかけについては、「福井駅前短編映画祭」を立ち上げた当時福井工業大学の木川先生が、この映像祭を立ち上げて開催を始めた2年目だったかな、「国内部門の審査員をしてください」と言われ、即答して今に至る、という感じです。今年の開催地は甲賀市。そう、忍者の街です! 福井からだと高速使って約2時間。蒲生もしくは竜王インターで降りて内陸部へ。
甲賀市って普通には「こうが」って読みたくなるんです。伊賀(いが)忍者も「が」なので、「こうが」にもなってしまいますが、正式には「こうか」です。「こうが」って発音すると手裏剣が飛んできます(笑)。
そう言うても日本語の発音しやすさから「こうが」って言いたくなるというか。何度も地元の人が「こうが」って発音しているのを見ました。何度手裏剣食らってんだろう(笑)。
同窓会気分

一年に一度、審査員が集まるこのイベントは、もはや同窓会な感じになってきました。審査員だから、作品をみんなで見てるもんだから、話もまとまるし、それ以上にクリエイティブな人たちが集まるから、それもまた話をしていても通じ合うというか。
審査員代もありません。自分たちがただただ、このイベントに参加することが楽しいというか。そんな感覚でみんなが集まっています。
同窓会も同じでしょう? 同窓会という、年に一度会える友との時間があるから、全員自腹で集まって交流のひとときを楽しむじゃないですか。それと一緒です。
加えて毎年同じ場所ではなく、全国各地で開催されるので、旅と同窓会がセットになっている感覚です。たまたま今回は車で来れる距離だったってことです。
交通の要所・甲賀市

さて甲賀市。元々が5つの町だったのを平成の大合併で一つになりました。忍者もそうですが、信楽焼も甲賀市にあります。会場はその中でも中心地的な旧・水口(みなくち)町。
福井にいると国道8号線とか名神高速とかで平地を走るから、ここがメインの通りと思っていて、内陸部の甲賀市は山の中、と思っていましたが! 国道1号線! そして東海道! ここ通っていたのね! おみそれしました…。
そうか、名古屋から京都に向かうのに最短距離はこの道を通るのか。東海道新幹線とか名神高速とかあるから関ヶ原が中心の道路かと思っていたけど、地図見れば分かる通り、名古屋から鈴鹿、亀山を抜けて水口を抜ける方が近いんです。

田舎もんの自分は国道1号線とか東海道とかってのにめちゃめちゃ惹かれました。思わず車で東海道の道を走ってみましたが、かつての集落の跡とかが、現代でも地区の集合でわかるというか。なんかワクワクしました。
水口は水口宿として東海道50番目の宿場町だったそうで、その中心には水口城があって、甲賀市の行政関係は全部このあたりに集まっていました。水口城は映像祭が終わってから見に行きます。
ちょびっと観光をば


でもって、何か名物をって探したら「スヤキ」ってのが出てきて。これは一体何だ? って早速行きました。後で知りましたが、あ、ここ東海道沿いだ…。
「スヤキ」って、簡単に言うと味なしの焼きそば、って感じで、味付けはお好みで、って感じでした。テレビでも紹介されたらしく、みんな注文してましたが、ここは製麺所らしく、でも食堂の体なので、自分的に魅力的なメニューばかりでした。また来よう。

で、前夜祭。会場がなんと文化財の神社「油日神社」。でもみんなが泊まる場所から車で30分…。雨が降ってるから寒いってほどではないけど、まあまあ寒い、でした。
油日神社って国内でも唯一の名で、古事記にも日本書紀にも載っていない、でも千数百年前から油の神様を祀っている、かなり霊験あらたかな神社、なのですが、実はロケ地としても有名な場所。あの『侍タイムスリッパー』でも使われている場所なんです。
映画祭初日

さて翌日。初日の会場では海外からの方のトークセッションや、突然MCを任されて国内作品のトークセッションが行なわれました。
観光映像の制作は、民間企業よりも行政が発注することがほとんどで、その目的は自分の街のブランディングであったり、来街者増加であったり。
「きれいなこの景色の場所に行ってみたい」とか、「美味しそうなあの料理食べに行ってみたい」とか、「へぇ、この街ってこんなんだ。ちょっと興味出てきた」とか。
世界中の人に知らない街を知るきっかけを作るのは、映画も含めて映像だと思っています。言葉が伝わらないからこそ映像で伝えることができるんです。それが映像の醍醐味です。
選ばれる映像とは
今年は海外から約1300本、国内からは174本が到着した今回の映像祭ですが、毎年のように観光映像を審査員として見ていると、ある種の趣向が自分には見えてきます。それが独自のものなのか、となると、そうではないというか。
トークセッションのとき、印象に残った作品を話し合ったのですが、結果的にみんな同じ作品を選んでいたりもして。それって住む地域も違う、生活も違う、そんな中で選ばれていたのは、純粋に美しいだけの作品ではないんですね。
どんな作品なのかというと、「その地域の営み、ストーリーが見える」ということでした。もちろん、美しい景色は見ていてもいいのですが、何故か記憶に残るのはそうした営みの風景なんだと。
このトークセッションで与論島の方言の作品があったのですが、こちらも与論島に行ったことがあるからこそ、あの空気感が出ていて良かったです。与論島の言葉が、日本語の標準語とはかなりかけ離れていて、でもこれは島の人たちが紡いで大事にしてきた文化であり、ストーリーでした。
そういえば、ってみんなが思い出したのが、宮崎県小林市の動画でした。もう10年前の作品なのに今でも鮮明に覚えているのは、文化とストーリーがしっかり映っていて、最後にどんでん返しがあるからなんだろうと、今も思います。
その後、ドローンが出てきて、さらに縦型動画が出てきて、と、映像の世界は日々進化しています。ただ、それは技術が進化しただけであって、人の心を打つ映像って変わらないというか。
縦型のバズる動画
だから今回も前夜祭や初日で縦型動画についての話が出てきました。世界の観光映像は増えているのに、日本の映像が少なくなってきている、という話です。それは縦型動画で観光素材を作っていることが一つ理由としてあるのでは、ということです。
バズる、という言葉がありますが、行政も観光関係の業者も、みんなバズることを目指して動画を作っています。もちろん動画はいくらいいものを作ったとしても、見てくれなかったら意味がありませんからね。
なのでバズる動画を作る、というのはある意味理にかなっています。今や映像はスマホで、の時代。となれば横型よりも縦型、というのが自然の流れです。そこで縦型を作るときに大事なのが「作り続けなければ忘れ去られる」ということです。
バズるというのは、一瞬の突風のようなもので、その認知度は急激に上がります。しかし、それから何もしなかったら、その上がった角度と同じ角度で下がります。なので、下がらないようにさらにバズる動画をアップする必要がある、ということです。
つまり、バズり続けるために上げ続ける、ということが必要になります。そういうのを作るのが好きな方は、多分面倒がらずに上げ続けることができると思います。それを生業としている人もいるわけですしね。
バズる動画の先に
「忘れ去られる」というのが人間は怖いのです。バズればバズるほど、動画の再生回数に一喜一憂してしまい、「もっとバズる動画上げなきゃ」って。その行き過ぎたのが、よく動画でニュースになる、犯罪に近い、刑事告訴もあるような、いわゆる迷惑動画につながっていくのではないかと。
これはまぁ、行政や観光関係の方ではそうならない理性がありますから大丈夫かとは思いますが、気にすればするほど、忘れ去られることに恐怖を感じれば感じるほど、過激になっていくというか。
果たして再生回数を上げることが目的なのか、いいねの数を増やすのが目的なのか、そういうところに執着すると、本来の目的を忘れてしまいがちになるので、バズる動画は「目的をしっかり、一喜一憂せずに、理性を持って」作ることが大事かな。
縦型動画の特徴
あと、縦型動画について。ショートムービーでも縦型に突風が吹いたりもしていました。映画にほんの少しだけ関わる者として、縦型の動画の特徴を挙げるとすると、人にフォーカスする、ということです。つまり、その人の演技力がめちゃめちゃ試されるのです。
でも、手っ取り早く作れるからと作ると、バズるために演出をすると、演技がベッタベタになってしまうんです。海外の縦型映画も見たことありますが、ここまでベタなのか、と思うくらいで、日本はそれ以上というか。
もちろん素晴らしい演技をされる方もいるので、すべての縦型動画がそうか、というわけではありません。ただ、簡単に作って乱発する縦型動画はバズりもしない、イメージも良くない、という悪循環に陥るのでは、とは思います。
縦型の観光映像も同じことで、モノにフォーカスせざるを得ない部分があります。観光ってその地の空気感に触れるのが本質でもあるので、モノだけにフォーカスをしても、空気感がわかりにくいです。逆にフォーカスしない縦型動画は再生回数が回りにくいのでは、とも思います。
例えば、バズって観光に来ても、結局フォーカスされたものを見るか買うか食べるかで終わり、になってしまって、次につながっていかないのでは、とは思います。旅は次も訪れたい、と思ってこそだとは思うので、映像ではフォーカスよりも空気感を伝えることが大事かと。
となると、どうしても縦型で観光映像を作っても、バズってフォーカスしたものだけをチョイスして、それで終わり、という気がしてなりません。目先の数字だけを追うのであればそれでいいとは思いますが、長くこの地を愛してもらうならば、空気感は大事なんではないかと。
心に残っていく動画
そういう意味でドローンを使った観光映像を見ていると、部分的に、効果的に使うのはいいですが、ほぼ全編ドローンで空から見せる映像はもはや観光映像として「?」が付いてしまいます。だって、空から街を見せたって、訪れた人はその景色を見ることはできないのだから。
観光映像祭が始まった頃にドローンを使った映像はたくさん出てきました。当時は物珍しく、素晴らしいと思っていましたが、今や食傷気味で、その数も減ってきています。景色がきれい、ではもう人は感動しない、ということに気付いたのでしょう。
この映像祭でいろんな世界中の映像を見てきましたが、自分的に現時点で最高の作品は「宇久島」という作品でした。宇久島という長崎県の小さな島の物語です。ここまで感動させられるものなのか、と感じました。
この作品は、2022年の日本国際観光映像祭日本部門グランプリ、ショートショートフィルムフェスティバル&アジア観光映像大賞(観光庁長官賞)受賞、さらにポルトガルで行なわれた「ART&TUR」国際観光映像祭でもAdventure & Expeditions部門で1位を受賞、とまあ、そうそうたる受賞歴。
名物やシンボリックな観光地が出るわけでもなく、島の人たちの営みと歴史がナレーションと共に映し出されています。ナレーションの口調と、映像の美しさ、すべてが合致した作品だと思います。一度見てみてください。
一番感動したこと

そしてお楽しみのレセプションパーティー。ここでは世界中からクリエイターが集まって英語含めて交流が生まれます。 ほとんどの人がクリエイターなので、自分はカメラを回すわけでもないので、動画についての話はあまりしませんが、でもいろんな交流を深めることができました。
この映像祭で一番感動したことを言うと、「甲賀ロケーション推進協議会」の皆さんの動きです。もう素晴らしいの一言。実はフィルムコミッションとして立ち上がっているわけじゃないんです。皆さん手弁当で、仕事の合間に行なっているんです。
その動きがまぁなんともフットワークが軽い軽い。全国のフィルムコミッションの人は見学に来た方がいい、話を聞きに来た方がいい、ってくらいの動き。市長もいらっしゃったのですが、「是非フィルムコミッションとして活動したほうがいいですよ」とは伝えました。
協議会の人たちはたくさんいて、みなさんそれぞれの役割に徹しておもてなしをしています。その統率がしっかりされていて素晴らしいんです。みなさん本当に手弁当で、自分の街が好きです、という気持ちがあふれています。やっぱこれだよな、フィルムコミッションを遂行するには「自分の街が好きです!」と声高らかに言える人がいることだよなー。
最低10年続けること

でもって、翌日はロータリークラブのセミナーのために丸一日いなくて打ち上げには参加しました。もうここが同窓会会場(笑)。全国各地、全世界各地の人たちが集まって、それぞれの街のことや、仕事のこと、出会った人のことなどなど、1年(2年ぶりの人も)ぶりの再会を楽しみました。
嬉しかったのが「ムービーハッカソンをしたい」という声をいくつかいただいたこと。映画祭もムービーハッカソンも10年やり続けてきたことで、認知されたことが純粋に嬉しかったです。本当に。涙が出そうでした。
これまで生きてきて感じること。「最低10年は続ける」ということです。元職の編集の仕事だってそう、新栄商店街だってそう、長坂真護くんの応援だってそう、そして映画だってそう。10年経った頃にいろんなことが起きています。目的を持って、目標を持って、覚悟を持って、コトにあたる。そして継続する。誰かが見てくれているんです。
だから、観光映像だってそう。最低10年は作り続けることが大事なのでは、と思います。それが縦型であっても横型であっても。もしかしたらドローン映像だって一周回って評価されることもありますから。行政も観光関係の方もそう、目の前の数字にとらわれず、10年先の目標と、やるべき目的、そしてやったなら覚悟を持って取り組む、これだ大事なんではないかな、と思った今回の映像祭でした。
そして甲賀市観光を

翌日、行きたかった水口城に行ってきました。徳川家光公の上洛の際にお泊りするためだけに作られたそうで、この城を作ったのが小堀遠州! 漫画『へうげもの』にも登場する有名な茶人兼武将。それだけで親近感が湧きました。
ただ、家光公がお泊りになったのが1回だけで、後は水口藩ができて大名が入ってきたにもかかわらず、「幕府から借りているから」と、本丸御殿を一切使わずにいたそうです。忠義に厚い人たちがいた街です。
結局老朽化で解体され、明治には本丸御殿跡は売却され、今では水口高校のグラウンドに。だから水口城の門の隙間からのぞくとグラウンドで野球部が練習している姿が見えました。なんか、現代的ですねー。
この水口城で一番見たかったもの、それは「水口レイピア」と呼ばれるもの。レイピアとは洋剣のことで、日本で現存する唯一のもので、かつ、外国から来たものではなく、日本で作られたものとな! 珍しいです。そして美しいです。

その後民俗資料館にも伺いました。曳山文化が今も残っている街で、それが滋賀県のいたるところで行なわれているようです。曳山って作るのにも結構お金もかかっていて、保存する場所も各地区で持っていて、となると、当時は商人とか職人がいた街なんだろうな、って感じます。さすが東海道の宿場町。

東海道の昔の地図に沿って、今も三叉路に分かれている道もありました。小さい川にかかる橋「石橋」はかつての水口城からの水路だったり、この橋を分岐点に曳山のお囃子の曲調も変わったりと、かつての面影を残していたりします。


いやー、結構ここまちあるきできるなー、って思いました。東海道の宿場町って、やっぱりいいですねー。見どころがあって、食べるところもあって、買い物できるところもあって。もちろん住宅街的な場所にもなっていますが、面影はやっぱりあります。
たった2日半の時間でしたがとても有意義な時間を過ごせました。さて、来年以降の「日本国際観光映像祭」、世界中からクリエイターたちが集まる映像の祭典、かつ、彼らが自分の街の観光映像を撮ってくれたりもします。文化を後世に残しておきたい街、ゆっくりじっくりリピーターを増やしていきたい街、多様な価値観を受けとめる街など、是非手を挙げてほしいと思います。